STEYR ARMS( ステアー )唯一のハンドガン L9-A2 がガスブローバックで登場!
台湾のエアガンメーカーKJ WORKSより、面白いガスブロハンドガンが発売された。丸みを帯びたグリップに角ばっていて迫力のあるフロントフェイス。まるでテーザーガンのようにも見える変わったディテールのこの銃は、オーストリアの銃器メーカーSTEYR( ステアー )ARMSが現在唯一ラインナップしているハンドガン「Steyr Pistol A2」をモデルアップしたものだ。ASGにより ステアー 正式ライセンスを取得したガスブローバックとなっている。
オーストリア製のハンドガンといえば誰しもが思いつくのはグロックの存在だろう。ポリマーフレームオートをはじめて商業的に成功させたハンドガンとしてだけでなく、現在では法執行機関を中心にプロフェッショナルの現場で数多く見られるため映画やドラマでもよく目にする。サバゲーやシューティングマッチなどエアソフトでも最も人気の高いモデルと言っても過言ではないだろう。
対する ステアー は銃器メーカーとしてはグロックよりも歴史の長い老舗であり、ことポリマー素材を活かした銃器設計では先駆けともいえる存在だ。ブルパップ式ライフルのAUGなど実銃での性能の高さや特徴的なデザインからサバゲー業界でも知名度が高い。しかし、1980年代のオーストリア軍制式ピストルのトライアルにてグロックに敗北してからというもの、 ステアー のハンドガンが大きく陽の目を浴びることは少なく、正直マニアックなハンドガンに分類されている点は否めない。
しかし、ハンドガンにおける成功を諦めていない ステアー はグロックからの敗北を機に、その設計思想に感化され恥も捨てポリマーフレームオートの開発に着手。結果として軍用ピストルSteyr Mが誕生し、その系統の最新モデルが今回KJ WORKSによってモデルアップされたSteyr A2である。
KJ WORKS ステアー L9-A2 の特徴
KJ WORKSのモデル名にあるL9-A2とは、Steyr Pistol A2 MFシリーズのサイズ別に当てられた型式名で、9×19mm弾を使用する最も長いスライドモデルをガスブロ化したものである。実銃ではL9-A2のほかにミッドサイズのM9-A2、コンパクトサイズのC9-A2が存在する。かつてSteyr Mの時代は3つの弾薬に対応したモデル展開をしていたが、2回のモデルチェンジを経て最終的に9mmモデルのみに集約されている。
なんといっても特徴的なのが薄いスライドと高さのあるフレームの組み合わせだ。ローボア&ハイグリップによりバレルとグリップを極力近づけた独特のデザインは、リコイルの低減と最適なグリッピングを実現する。CZ(チェスカー・ズブロヨフカ)のハンドガンにも同様の特徴が見られるが、ハイグリップの実現という点では ステアー のフレーム設計は更に上を行っているように思える。
グリップはHK P30やHK VP9(SFP9)の様にバックストラップとサイドパネルが交換可能で、射手の手のサイズや好みに合わせたセッティングが可能。KJ WORKS L9-A2 でもバックストラップはS、M、Lの3種、サイドパネルはS、Mの2種が付属する。(デフォルトでMが装着されています。)
ステアー ピストルのもう1つの特徴がアイアンサイトだ。三角形のフロントサイトを台形型に抜いたリアサイトに合わせるという独特なサイトピクチャーは照準が付けやすく、こういった常識にとらわれないアイデアを形にしてしまうのは ステアー の得意とするところと言える。スライド上面が広く平面化されていることもあり、低く抑えられたアイアンサイトは装備への干渉もしづらく、非常に実用的な設計には思わず唸ってしまう。
その優秀なデザインのスライドをよく見ると、チャンバーには小さな切り欠きがあり中に真鍮のパーツが覗いている。これはスミス&ウェッソン M&P9などでも見られるローデッド・チャンバー・インジケーターで、チャンバーに弾薬が装填されているかを確認できるもの。KJ WORKSではチャンバーパーツに真鍮パーツをかませ、装填時の状態を再現している。東京マルイなどでもM&P9で再現している手法だが、細かいながら嬉しい演出だ。エキストラクター可動やスライドエンドのインジケーターは流石に再現されていない。
試射をして感じたのは、グロックや1911の様なメジャーなガスブロに比べトリガーフィーリングが独自の感触であること。引き代のうち遊びとなる部分にも僅かに抵抗が感じられ、シアが落ちる瞬間にしっかりとした、しかしクリック感とも違う感覚が指に伝わる。しっかりと重くそれでいて柔らかい、不思議なフィーリングだ。L9-A2は存在感のある厚みのトリガーデザインだが、イメージ通りのトリガーフィーリングを感じられると言えばわかりやすいだろうか。
2種のパワーソースに対応
KJ WORKS ステアー L9-A2 ガスブローバックでは本体にリキッドチャージ式のマガジンが付属するが、別売でCO2カートリッジ式のスペアマガジンも販売している。CO2マガジン側でガス放出量を絞った設計のため、同じ本体のままでもリキッドチャージ式マガジン、CO2マガジンをそのまま使用することが可能だ。ただし初速はCO2マガジンの方がやはり高めではある。1年を通して使用するのであればCO2マガジンでの運用がオススメ。
マガジンはハンドガン本体のサイズ感に比べ小振りで、マガジンポーチにもコンパクトに納まる。今後、M9-A2やC9-A2のショートモデルがガスブロ製品化されるか定かではないが、グリップサイズを同じとしながらコンパクトキャリーにも対応させた絶妙なグリップ及びマガジンサイズだ。
ステアー 正式ライセンスならではのリアルディテール&ギミック
エアガンとしてはASGとKJ WORKSのダブルネームとなるL9-A2 ガスブローバックだが、主にブランド管理としてASGが ステアー とライセンス契約を交わし、製作についてはKJ WORKSが担う形になっている。ステアー はオーストリア本社以外にアメリカ法人として ステアー アームズUSAが存在するが、今回ガスブロ製品化したモデルはUSA版がベースとなっている。とはいえ、実銃の仕様上の差はヨーロッパ版とUSA版ではマガジン装弾数くらいのもので、大きな違いは刻印のみである。
ガスブロ版ではトイガンとして刻印については制約があるものの、スライド右面のモデル名や左面のロゴ・メーカー名・弾薬表記、フレームに空いた内部フレームのシリアルナンバー窓など芸が細かい。ちなみにシリアルナンバーは個体ごとに固有のナンバーが振られている。
アメリカ版ではさらに外部フレームにもシリアルプレートが埋め込まれるが、ここについてはコストの関係かヨーロッパ版に準拠している。その他のパーツのシリアル表記やライセンス製品には入れられない刻印についてもオミットされてはいるが、グリップ周りのテクスチャーやロゴなど細かい仕上げが美しく、質感も素晴らしいの一言。
ギミックとして面白いのはセーフティーロックに付属のキーを使用する点だ。テイクダウンレバー(ディスアッセンブリレバー)の解除ボタンはそのまま押し込んで左に回すことでトリガーにロックを掛ける事が可能。ただし手指では操作できないようになっており、付属する専用キー型工具を使用する必要がある。ロックキーをキーチェーンなどに付けて装備として持ち歩くと、臨場感のある実用的な演出も可能というわけだ。
冒頭でも触れた通り、マニアックなモデルであることは否めない ステアー L9-A2 だが、そこに詰まったKJ WORKSによるこだわりのディテールやギミックは、他のメジャーモデルではなかなか味わえないものだ。既に商業的に成功したモデルを追い越すために注ぎ込まれた創意工夫には目を見張るものがある。
有名無名にかかわらず使いやすいエアガンを選びたい。他人とは違うスタイルのエアガンを使いたい。見た目のインパクトが大事。そのようなサバゲープレイヤー、シューティングプレイヤーに是非ともオススメしたいガスブロハンドガンだ。